こんにちは、あらいぐまです。
今回は、夏川草介さんの「スピノザの診察室」を読みました。
2024年の本屋大賞にノミネートされ、話題になっています!
夏川草介さんと言えば、現役医師の小説家。
その経験を活かした医療小説「神様のカルテ」で一躍有名になりました。
そんな夏川さんが書く医療小説の最新作「スピノザの診察室」。
現役の医師だからこそ描ける医療現場の描写。
死とは何か、幸せとは何かを訴えた1冊です。
あらすじ
雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
水鈴社 HP
主人公の雄町哲郎は、かつて大学病院で勤務していたが、町の地域病院で働くようになる。
大学病院では、いかに最先端の技術で病気を治すことが目的で、患者の顔を見る医療ではなかった。
しかし、地域病院では患者の声を聞き、顔をよく見なければいけない。
地域病院で働くことで、患者の気持ちや死に向き合ってきた雄町は、幸せについて考えるようになっていく・・・
登場人物
雄町哲郎:38歳医師。原田病院に勤務する消化器内科医
鍋島治:原田病院に勤務する外科医
中将亜矢:原田病院に勤務する外科医
秋鹿淳之介:原田病院に勤務する内科医
花垣辰雄:洛都大学の准教授
南茉莉:洛都大学の消化器内科医
美山龍之介:中学1年生、雄町の甥。母親である雄町の妹の死後、雄町と同居する。
心に刺さった言葉
それでは、「スピノザの診察室」を読んで心に刺さった言葉を紹介していきます!
一人で幸福になれる生き物ではない
地位も名誉も金銭も、それが単独で人間を幸福にしてくれるわけじゃない。
人間はね、一人で幸福になれる生き物ではないんだよ。
夏川草介「スピノザの診察室」株式会社水鈴社 p35
地位・名誉・金銭があっても一人だったらどうでしょうか。
最初は楽しいかもしれませんが、いずれ虚しくなると思います。
だからこそ、『幸福』になるには助け合う存在が必要である。
雄町の考えがよく表れている言葉だと感じました。
幸せとは?
人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。
手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。
真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。
その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。
そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか。
夏川草介「スピノザの診察室」株式会社水鈴社 p277
大切な誰か、友人、恋人など互いに助け合う存在が、人を幸福にさせる。
逆に言えば、助け合える存在がいない孤独な状態は、不幸である。
だからこそ、助け合える存在を大切にしなければいけない。
雄町の人生観が詰まっている言葉だと感じました。
まとめ
2024年の本屋大賞にノミネートされ、話題になった「スピノザの診察室」。
現役医師の夏川さんだからこそ描ける、患者の死・人の幸せ。
主人公の雄町とともに、読者も考えさせられる内容でした。
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