【感想・名言】人の噂は炎のように広がっていく【ファイア・ドーム 辻村深月】

ファイアドーム ネタバレ
  • URLをコピーしました!

こんにちは、あらいぐまです。

辻村深月さんの「ファイア・ドーム」を読みました。

「この夏の星を見る」以来、辻村深月さんの3年ぶりの新作!

あらいぐま

読むのめちゃくちゃ楽しみにしてました!

しかも上下巻の単行本・・・

重厚な物語の予感に期待大です。

結果、辻村深月さんの小説の中でもトップクラスに読む手が止まらない小説でした。

時間を忘れて読書に没頭する感覚、久しぶりに味わいました。

心に残った言葉とネタバレ含む感想を書いていきます!

目次

あらすじ

人はなぜ大きな事件に魅了されてしまうのか
噂は、軽薄な娯楽だ。

25年前、平穏だったはずの地方都市は、百貨店受付嬢誘拐殺人事件の発生、その報道により揺り動かされ、「噂」という大量の炎が、加害者のみならず被害者にも降り注ぎ、燃えさかった。ようやく静けさを取り戻したかに見える町に燻り続ける因縁が、いま新たな事件を呼び起こす――。

小学館 HP

登場人物

登場人物

新沼 紗英:一郷屋百貨店の受付係。25年前の誘拐殺人事件の被害者。

新沼 忠治:紗英の父。蒔戸市の元市議会議員。

新沼 好美:紗英の母。

戌井 絵梨:紗英の妹。

戌井 光汰朗:絵梨の息子。蒔戸市立一郷南小学校の4年生。

佐村 美冬:蒔戸市立一郷南小学校の2年目の教師。光汰朗の担任。

本間 尊:蒔戸市立一郷南小学校の教師。定年退職後の再任用の教師。美冬の指導係だった。

桜木 透真:L新聞本社の新聞記者。美冬の恋人。

鞍井 速斗:蒔戸市立一郷南小学校の4年生。光汰朗と同じクラスメイト。宇佐見SCでサッカーをしている。

坂井 一樹:蒔戸市立一郷南小学校の5年生。宇佐見SCで速斗と共にサッカーをしている。

巽 直弘:末並市の少年サッカーチーム星森FCのコーチ。

田村 晋也:25年前、ひき逃げにより亡くなる。当時小学4年生。

久我 隆太:印刷会社の社長。借金の返済のために新沼 紗英を誘拐して殺害。事件当時42歳。

心に刺さった言葉

名言

「ファイア・ドーム」を読んで心に刺さった言葉を紹介していきます!

事件という非日常

この人も興奮している。

身近で起きた非常事態に、”事件”に、自分が間接的にでも関わっているという事実に。

辻村深月「ファイア・ドーム」(上)株式会社小学館  p266

事件という非日常の出来事、その非日常の近くにいるだけで興奮してしまう。

事件との距離が近いほど、人は事件に魅了されて前のめりになります。

例えば、こんな経験は無いでしょうか。

ある殺人事件が発生した現場が、よく使う駅だったら?

昨日、通りかかっていたら?

おそらく、他の事件よりも前のめりになるのではないでしょうか。

それは、自分の中のどこかで興奮しているのだと思います。

あらいぐま

ここ先週行ったばっかだ!とか思ったりします。

このファイア・ドームを読んでいる最中、米澤穂信さんの小説「王とサーカス」での言葉を思い出しました。

自分に降りかかってくることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。

意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。

恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。

そういう娯楽なのだ。

米澤穂信「王とサーカス」p199

根も葉もない噂をする人々、自分と距離が近いところで起きた事件に前のめりになる人々。

ある種の娯楽として感じているのかもしれません。

ファイア・ドーム

炎が降ったのだと思う。

紗英を失った夏、この町に炎が降り注いだ。

平穏だったはずの静かな町が、ひとたびつつかれると揺り動かされ、そこに大量の炎が降り注ぎ、燃え盛った。

落ち着いたように見えても、ドームの底に火の粉は残っている。

誰かが揺らせば、たやすくまた、町は炎に包まれる。

(中略)ファイアドームだ。

辻村深月「ファイア・ドーム」(上)株式会社小学館 p115

人々の噂が、火の粉となりそれが大きくなると炎となり、事件の関係者を包む。

この小説のタイトルである「ファイア・ドーム」そのものを表している言葉。

SNSが無い時代、噂は口伝えやTVが主流でした。

しかし現代では、SNSの登場で良くも悪くも人と繋がりやすくなり、個人の発信もできるようになりました。

事件に対する意見としては、プラスの意見よりもマイナスの意見の方が目立つし、多い気がします。

特に「X」では、常に誰かが人の粗探しをしている感覚を持ちます。

火の粉が起きれば、すぐに燃料を投下し、どんどん炎上させていく・・・・

昔では考えられなかった大きさのファイアドームになっています。

あらいぐま

Xでは、常に何かが燃えているイメージです・・・

人の興味とは関心とは?

人は自分の興味のあるものしか見ない。

興味や関心がないものは情報として見ても、気に留めない。

意識しない。

だけど、ひとたび意識すれば、容易に釘付けにもなる。

人の興味とは関心とは、一体、何なのだろうか。

辻村深月「ファイア・ドーム」(下)株式会社小学館 p244

この小説の根幹となる問いの言葉だと感じます。

この言葉は、事件の渦中にいた美冬が、田舎から東京に帰省した際、事件のことを詳しく知らなかった友達に接して感じた言葉です。

私たちは、TVやネットで様々な情報・事件を目にします。

その中で、自分の興味のあるものだけ、自分と距離が近いものだけに釘付けになる。

あらいぐま

このことは、私も共感しました。

例えば、子どもが犠牲になってしまった事件が発生した際、実際に親になっている人とそうでない人では、受け止め方が違うと思います。

それは、事件との距離が近いからです。

この場合の距離とは、物理的だけではなく、共感できるなどの心理的距離も含まれます。

物理的距離と心理的距離

物理的距離:海外の事件よりも国内、同じ県、同じ市・・・の方が身近に感じる

心理的距離:自分の興味関心のある事柄や共感できるか

感想(ネタバレ含みます)

以下、物語の重要なネタバレを含みますのでご注意ください。

こんなにも先が気になって寝るのも惜しいと思ったのは、久しぶりの感覚でした。

それくらい、先が気になる構成だったし、登場人物に共感もしながら読み進められました。

物語の最初で、25年前の誘拐殺人事件に触れて、その詳細を細切れに挿入していく。

現代では光汰朗くんが行方不明になり、家族と美冬が疲弊していく・・・

上巻の最後には、行方不明の光汰朗くんが監禁された状態で見つかる。

見つけたは良いものの、追いかけてくる犯人・・・

ここで上巻が終わります。

あらいぐま

こんなの気になりすぎて、そのまま下巻も読んじゃうよ!

そして下巻では、物語の謎が回収されていきます。

光汰朗くんの監禁の真相は、25年前ひき逃げにより亡くなった田村くんの事件を諦めきれない本間の犯行でした。

このことをきっかけに、25年前の誘拐殺人事件の真相が明かされていきます。

物語の終盤、久我の手記を読む描写は、手に汗握る展開でした。

特に被害者の父親である忠治の心情描写は、胸に迫るものがありました。

そして久我が手記に書いていた真相は、驚くべきものでした。

25年前に亡くなった田村くんをひき逃げしたのは、久我であるということ。

また、誘拐された紗英は、田村くんを助けようと声を上げてしまい殺害されてしまったこと・・・

久我、めちゃくちゃ悪い奴じゃん。

最初私は、25年前の誘拐殺人事件の犯人が久我ではないのでは?と思っていました。

犯行が杜撰すぎたからです。

身代金目的のために誘拐したのに、誘拐した日に殺害したり、結局間違えて身代金受け取れなかったり。

でも結局、久我が犯人でした。

紗英と田村くんが亡くなったのも、新沼家にあらぬ噂が立ったのも、本間が光汰朗くんを監禁したのも、

久我が全部悪い。

「ファイア・ドーム」を読んで感じたのは、事件の関係者は、責任のない噂に振り回されてしまうということです。

非日常の事件に対して前のめりになっている人、事情も知らないのにSNSでデマを回す人。

責任感などない噂(=火の粉)は、尾びれがつきどんどん広がり、やがて関係者の周りを炎が包んでいきます。

その様子は、まさに「ファイアドーム」。

人の興味関心は、なんて厄介なものなんだろうか。

あらいぐま

読書の幅を広げたい人にオススメ!

Kindle Unlimitedは、200万冊以上が読み放題。

\ 今だけ30日間無料/

あらいぐま

本を読む気力が無い時でも本が楽しめる!

Audible(オーディブル)は、12万冊以上が聞き放題!

コスパ・タイパ抜群の神サービスです!!

\ 今だけ30日間無料/

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はじめまして。
あらいぐまと申します。
読書とソロキャンプが趣味の28歳の会社員。
ミステリ小説多めです。
読んだ本の感想や考えたことを発信します!

コメント

コメントする

目次