こんにちは、あらいぐまです。
今回は、辻村深月さんの「朝が来る」を読みました。
現在(2020年11月21日)、映画も公開中です。
2023年現在は、NETFLIXなどで配信しております。
そんな私も、某テレビ番組で見た映画の紹介がきっかけで、この本を読みました。
・不妊治療
・特別養子縁組
・血のつながりとは
不妊治療を続けていた佐都子と清和は、特別養子縁組を特集した番組を見たことで、養子を迎える決意をした。
その後、夫婦の元にやってきた子どもを”朝斗”と名付け、平穏に過ごしていた。
そんなある日、朝斗の実の母親を名乗る女性から電話があり、「朝斗を返してほしい」と訴えるのだった。
しかし、朝斗の実の母親に会ったことのある佐都子は、違和感を感じていた。この声の主は、本当にあの時出会った朝斗の実の母親なのだろうか。
あらすじを見てわかる通り、不妊治療・特別養子縁組と軽く扱えるテーマではありません。
そんなテーマにも関わらず、どんどん読み進めてしまいます。
それは、登場人物の心情をとても丁寧に書いているからだと思います。
この小説は350ページとページ数は長くはありませんが、内容が濃いため、ページ数以上の小説を読んだ気分になります。
読んだ後は、しばらく呆然としていました。
\辻村深月さんのオススメ小説!!/
不妊治療
この物語では、夫婦で行った不妊治療のことを「長いトンネル」に例えています。
朝斗がうちにくる前のことを考えると、それは、長いトンネルの中にいるような気持ちだ。
長い長い、そして、出口があるのかわからないトンネル。
出口がないのではなくて、あくまでも、出口があるかどうかわからない、トンネル。
希望はない、光は差さないと言われたらそこで気持ちの区切りがつくかもしれないのに、終わりがあるかどうかがわからないから、人は、縋ってしまう。
辻村深月「朝が来る」株式会社文藝春秋 p69
長く辛い不妊治療を行うことになる夫婦ですが、不妊のきっかけは旦那の無精子症でした。
この無精子症について、私自身あまり知らなかったので、この機会にと思い調べてみました。
そもそも不妊症の割合について、以下のような文章を見つけました。
現在では、通常のカップルのうち約15%は不妊症といわれています。
男性にのみ不妊原因があるカップルが24%
女性にのみ不妊原因があるカップルが41%
男女ともに原因があるカップルが24%
原因不明が11%と報告しています。
日本Men’sHealth医学会
男性側にも半分近く原因があるんですね。
男性にも原因があると知ってはいましたが、ここまで多いとは知りませんでした。
そして、無精子症についてがこちらです。
無精子症
一般男性の約100人にひとり、男性不妊症の方では約10人にひとりの割合でみられるとされています。
無精子症は以下の2つに分けられます。
・閉塞性無精子症:精巣で精子が作られているけど、通り道が詰まって出てこない
・非閉塞性無精子症:そもそも精子がうまく作れない。
この無精子症を治療するには、顕微鏡下精巣精子採取術が有効です。
杉山産婦人科 新宿 参照
不妊の原因が自分側にあると知った時、どんな思いでパートナーと接すれば良いのでしょう。その複雑な気持ちも見事に表現されていて、読んでいて心苦しかったです。
不妊症は、誰にでも起こりうる出来事です。もしも、自分だったら・・・という事を考えながら読み進めていきました。
無精子症を治療するための顕微鏡下精巣精子採取術は、睾丸をメスで切り精子を採取するというものです。この小説に登場する夫婦は、この手術を遠い病院まで受けることになります。
夫婦は、1回30万円以上かかる手術を2回試しますが、結果は陰性。
出口が分からない長いトンネルを進むのに限界を感じた時、特別養子縁組を仲介する団体を知ることになります。
この前TVを見ていたら、不妊治療の保険適用に向けて政府が検討しているというニュースを見ました。この小説を読んでいなかったら、素通りしていたニュースかもしれません。保険適用されれば、治療の負担が大幅に軽減されることから、今後の対応を引き続き注目していきたいと思います。
→2024年現在、不妊治療は保険適用になっております!
特別養子縁組
辛く長い不妊治療の末、夫婦は特別養子縁組の仲介団体に出会います。
その団体の代表者の言葉が印象に残っています。
「特別養子縁組は、親のために行うものではありません。子どもがほしい親が子どもを探すためのものではなく、子どもが親を探すためのものです。すべては子どもの福祉のため、その子に必要な環境を提供するために行っています。」
辻村深月「朝が来る」株式会社文藝春秋 p104
特別養子縁組は、子どものため。
子どもへの虐待や赤ちゃんの置き去り。時々、このような悲しいニュースが流れてきます。
そのような子どもを少しでも無くすため、特別養子縁組があるのだと言います。
養子を迎えるかどうか夫婦で話し合う場面があるのですが、その中でも印象に残っている言葉があります。
「うちには幸い、父親の役割ができる人間と、母親の役割ができる人間の両方がいて、子どもを育てるための環境がある。この環境が役に立つなら、使ってもらうのもいいんじゃないかと思ったんだ。そんな理由じゃダメかな」
辻村深月「朝が来る」株式会社文藝春秋 p110
子どもが親を探すための制度であるなら、自分たちの環境をその子どものために役立てたい。
そんな理由だっていい。夫婦の決意が表れている言葉だと思います。
私が、この小説で一番驚いたことが、養子を迎えたことを周囲に話していたことです。
養子という事実を周囲に隠しているイメージがありましたが、そうすると後で事実が判明した時に変な噂が立つ原因になりますし、何より子ども本人にもずっと隠さなければいけません。
実際に特別養子縁組を仲介する団体のホームページを読むと、子ども本人に自分が養子であるという事実告知を早くから行ったほうが良いとありました。
子どもに隠し続けることは難しく、年齢が上がってから事実を受け入れるよりも、早くから自分の生い立ちを知った方が良いとのことです。
ただ、養子に対して良く思わない人もいるわけで、血のつながりを大事にしている人もいます。
この小説にも、「犬や猫じゃあるまいし」と批判する人も出てきます。
養子縁組を行った方のブログなどを拝見しても、周囲の理解(特に親)が肝であることがわかります。
この小説を通して、養子縁組のサポート団体があることを知りましたし、体験談などのブログが多数あることを知りました。
また、そのようなホームページを拝見する中で、この小説のリアルさを感じました。
佐都子が経験していたことを実際に経験した方がいること。
そして、これは誰にでも起こり得ることであること。
もし自分たちが佐都子夫婦の立場だったら、何を選択するだろうかと考えさせられた小説でした。
読書の幅を広げたい人にオススメ!
Kindle Unlimitedは、200万冊以上が読み放題。
\ 今だけ30日間無料/
本を読む気力が無い時でも本が楽しめる!
Audible(オーディブル)は、12万冊以上が聞き放題!
コスパ・タイパ抜群の神サービスです!!
\ 今だけ30日間無料/
コメント