こんにちは、あらいぐまです。
今回は、今村昌弘さんの「魔眼の匣の殺人」を読みました。
この本、2018年度このミステリーがすごい!で1位になった「屍人荘の殺人」の続編であり、つい先日、7/30に続編3弾である「兇人邸の殺人」が出版されました。
この「兇人邸の殺人」が発売されたことを知り、第2弾の「魔眼の匣の殺人」を読んでいないことを思い出したので、今回読んでみました。
読んだ結果から言うと・・・「屍人荘の殺人」に負けない面白さでした!!
予言が当たるという特殊設定ミステリーなのですが、その設定が素晴らしかったです。
それでは、ネタバレなしで魅力を書いていこうと思います。
○絶対当たる予言の特殊設定ミステリー
○予言×クローズドサークル・・・死ぬ人数が確定しているクローズドサークル
○見事な伏線・・・「ここで、あの時話していたことが関係してくるのか!!」
絶対に当たる予言
「魔眼の匣の殺人」は、「ある予言者の予言が絶対に当たる」という特殊設定になっています。
そもそも、特殊設定ミステリーとは、読んで字のごとく“特殊な状況下でのミステリー”のことです。
斜線堂 有紀「楽園とは探偵の不在なり」・・・殺人を2回犯したものは、その場で地獄に落ちる。
西澤 保彦「七回死んだ男」・・・主人公が、7回まで同じ日をタイムリープできる体質の持ち主。
「魔眼の匣の殺人」では、「2日間で男女が4人死ぬ」という予言がされます。
この予言は、絶対に当たります。
絶対に当たる予言の中で、起きる殺人事件・・・
面白いと思いませんか??
せっかくなので、この特殊設定ミステリー魅力について。
特殊設定ミステリーの魅力は、何と言っても非日常感×推理だと思います。
通常の推理小説であれば、探偵や警察が現実に即した推理をしていきます。
そこにある特殊な条件(超能力やSF的な装置)が加わることで、現実に即した推理小説が、一気に非日常的な推理小説になります。
そんな非日常の推理小説では、普段ならあり得ないことも推理する必要が出てきます。
「楽園とは探偵の不在なり」では、殺人を2回犯すとその場で地獄に落ちるというものでした。そのため、「1回目の殺人は可能だけど、それ以上は同じ人だと殺害できない」と普通ならあり得ないことも考える必要がありました。
この普段ならあり得ないことを考慮して推理をすることが、特殊設定ミステリーの魅力だと思います。
クローズドサークル
「魔眼の匣の殺人」では、「魔眼の匣」と呼ばれる元研究施設で、殺人が起きます。
そして、館ものの定番である「クローズドサークル」という展開になります。
外界との行き来や連絡ができなくなってしまった状況。孤立した状況で事件が起きること。館や島を扱った小説で多い。
館といえば、定番だよなぁと思い読んでいると、以下のように書かれていました。
「橋のこちら側から逃げられないのは犯人も同じ。外から警察や救助が来た時、中で殺人事件が起きていたら警察はどう考えるでしょうか。犯人が私たちの中にいることは明白で、全員が身辺や過去を徹底的に調べ上げられます。犯人が捕まる可能性は限りなく高い。つまり、クローズドサークルほど犯罪に不向きな状況はないです。」
今村昌弘「魔眼の匣の殺人」株式会社東京創元社 p210
この文章を読み、確かにそうだよな。と納得しました。
クローズドサークルの推理小説は、結構読んできたつもりでしたが、当たり前だと思いすぎていて、このことを考えていませんでした。
犯人も自殺するつもりで、ターゲットが逃げないように全員まとめて閉じ込めるなら、分かります。
しかし、犯人が犯行を隠すような場合には、不向きすぎますよね。
この中に犯人がいるって言っているようなものなんですから。
予言×クローズドサークル
一般的なクローズドサークルの推理小説では、殺害される人数が不特定です。
下手したら、全員殺されてしまうなんていう小説もあるくらいです。
殺害される人数が不特定なため、閉じ込められている人々は、「いつ自分が殺されるか」という恐怖と闘う場面もあります。
「魔眼の匣の殺人」では、死ぬ人数が予言によって確定しています。
具体的には、男性2人で女性2人が死ぬことになっています。
そのため、クローズドサークルではあり得ない“死ぬ人数が確定しているクローズドサークル”ということになります。
普通ならあり得ないクローズドサークルを味わえるのも、今作の魅力だと思います!
見事な伏線
今まで、特殊設定・予言×クローズドサークルと魅力を伝えてきましたが、最大の魅力はそこではありません。
今村昌弘さんの小説ですので、見事な伏線が散りばめられています。
「ここで、あの時話していたことが関係してくるのか!」と思うこと間違いなしです。
すべての伏線を書きたい!!という欲が出てきますが、後で読む人のために書かないでおきます。
「しっかり読んでいれば推理できたんじゃないか??」と悔しい思いをしましたが、正解が分かっているからこそですよね。結果、分からなかったんですから。
この続編である「兇人邸の殺人」も購入済みですので、非常に楽しみです!!
すこしでも不思議な表現や曖昧な表現が書いてあった時には、立ち止まって考えようと思います(笑)
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