こんにちは、あらいぐまです。
今回は、柚月裕子さんの「ミカエルの鼓動」を読みました。
本作は、「ミカエル」と呼ばれる手術用ロボットを取り巻く医療小説です。
166回直木賞の候補作でもあり、今注目されています!
柚月裕子さんの小説は、「慈雨」「盤上の向日葵」など読んできましたが、どの小説とも違う雰囲気を感じました。
柚月裕子さんの小説でよく登場する「渋いおじさん」が登場しないんです。
しかも、刑事・ヤクザも登場しません。
「ミカエル」という手術用ロボットをめぐり、「生きるとは何か」と問いかけてくる小説でした。
濃密な医療小説で、考えさせられる言葉も多かったです・・・
あらすじ
手術用ロボット「ミカエル」は、医師が患者から離れた場所でロボットを操作し、手術を行うことができる。
「ミカエル」により心臓手術を成功させた西條は、「ミカエル」推進の第一人者となる。
ある日、ドイツから天才医師である真木が帰国。
ある少年の手術に対して、「ミカエル」を推進する西條と従来の手術を推進する真木で対立する。
そんな中、「ミカエル」を推進していた医師が自殺する。
「ミカエル」は天使か偽物か。
大学病院の闇に迫った医療ミステリー小説。
手術用ロボット
この小説には、手術用ロボット「ミカエル」が登場し、物語の中心になっています。
医師が患者から離れたところで、ロボットを操作して手術をする・・・
夢みたいなことだと思い、手術用ロボットについて調べてみました。
すると、「ミカエル」そっくりなロボットがありました!
その名も「ダヴィンチ」
東京医科大学病院のホームページに詳しく「ダヴィンチ」について書かれていますので、興味を持たれた方は、調べてみてはいかがでしょうか?
【東京医科大学病院ホームページ:https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/davinci/function/index.html】
小説を読んでイメージしていたのが、まさにこの「ダヴィンチ」でした。
「ミカエル」は小説上の夢物語だと思っていました・・・医療の進歩を感じます。
自分の命
この小説の主人公である西條は、延命治療を拒否した自分の父親に対して、このように言っています。
人は自分だけでは生きられない。
誰かに支えられて生きている。
ならば、自分の命は自分だけのものではない。
自分が望まずとも生きることが、誰かを救うことになるのではないか。
柚月裕子「ミカエルの鼓動」株式会社文藝春秋 p157
これは、父親が延命治療をしなかったため、その後辛い思いをした西條だからこそ言える言葉だと思います。
本人が延命治療を望まなかったら、家族が無理やり延命治療を強制するべきではないという意見もありますが、それは第三者だから言えることだと思います。
自分の家族が、もし延命治療を望まなかったら・・・
きっと私は、延命治療するように説得するでしょう。
もしかしたら、本人は「延命治療したい」と思っているのに、費用面などで迷惑をかけたくなく、「延命治療をしない」という選択をしている可能性だってあります。
延命治療するかしないか・・・
人それぞれ考えがあって、正解なんて無いのかもしれません。
でも私だったら、エゴだと言われようと家族には一秒だって長生きしてほしいと思います。
もしもの時のために、家族で延命治療をするかしないか話し合った方がいいですよね。でも、その”もしもの時”が現実感を帯びてしまうようで、話しづらい話題です・・・
あなたの「普通」は、誰かにとっての「幸せ」かもしれない
手術が必要な少年を見て、西條はこのように考えます。
幸不幸は人の心のなかにしかないように、普通と思う状況もそれぞれで違う。
誰かにとっての普通は誰かの不幸であり、誰かの幸せだ。
柚月裕子「ミカエルの鼓動」株式会社文藝春秋 p227
ここに3人の男性がいるとします。
Aさん:お金持ち
Bさん:会社員
Cさん:入院中の患者
Aさんは、お金持ちであり、貧乏な生活には戻れないと思っています。
Bさんは、今の生活に満足しておらず、「もっとお金があればいいのに」と思っています。
Cさんは、現在入院中であり、普通の生活に戻りたいと思っています。
Bさんにとっての「普通の生活」は、Aさんにとっては「不幸」であり、Cさんにとっては「幸せ」です。
この言葉を聞いたときに、ある歌詞が思い浮かびました。
それは、かりゆし58の「さよなら」という曲の歌詞です。
僕が生きる今日は、もっと生きたかった誰かの明日かもしれないから。
かりゆし58「さよなら」
中学の頃にこの曲を聴いてから、ずっと心の隅に置いている言葉です。
中学の頃にこの曲を聴いてから、ずっと心の隅に置いている言葉です。
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