【感想・名言】タイトルと表紙の意味とは?【正欲 朝井リョウ】

正欲 朝井リョウ 感想
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こんにちは。

あらいぐまです。

今回は、朝井リョウさんの「正欲」を読みました。

2022年の本屋大賞にノミネートされています。

以前オードリーの若林さんがおススメしていて、気になっていた一冊でした。

この作品がどのように今の世の中を転がっていくのかをしっかり見届けたいと思わされた一冊でした。

多様性という言葉が溢れていることへの言語化できない妙な心の引っかかりを自分もろとも貫かれてダメージを食らいました。

無遠慮にお勧めすることが憚られる大傑作だと思います。

2021.3.24 masayasuwakabayashi  Instargram

他の感想も見てると、気軽に読めるような内容では無さそうです。

そのため、読むのを先延ばしにしていました。

実際に読んでみて、自分の薄っぺらさや考えの無さを突き付けられるようでした・・・

目を背けて蓋をしていたものを無理やり開けられて、その存在を見せつけられるような感覚。

「多様性が大事!」

「差別や偏見なんてしない!」

と思っている人に読んでほしい一冊だと思いました。

ダメージを食らいますが、壮絶な読書体験になること間違いなしです。

目次

”多様性”という便利な言葉

登場人物の中に、ある特殊な状況下でしか性欲が満たせない人物が出ていきます。

その登場人物の言葉が刺さりました。

自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな

「正欲」朝井リョウ 株式会社新潮社 p337

幸せの形は人それぞれ。

多様性の時代。

自分に正直に生きよう。

そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。

「正欲」朝井リョウ 株式会社新潮社 p214

この言葉を読み、自分の”多様性”についての考えと向き合ってみました。

果たして、自分が想像を絶する・あり得ないと思ってしまう人たちを”多様性”の中に入れていただろうか。

そもそも、想像を絶する人たちがいるという事実を知っていたか。

”多様性”という便利な言葉を軽々しく使っていたように思います。

”多様性”という言葉が世間に浸透し、それを否定しようものなら、「前時代的」と言われてしまう。

自分が排除されたくないから、”多様性”を認める立場を取っているものの、その実態は何も把握していなかった。

見たくない、考えたくないことを”多様性”という言葉で蓋をしていたのかもしれません。

そうすれば見なくて済むし、楽だから。

”多様性”なんて自分では認めているつもりだったけど、実際は世間の声に流されているだけなのだと思います。

自分の薄っぺらさを見せつけられた言葉でした・・・

タイトル「正欲」の意味

この本のタイトルである「正欲」ですが、「性欲」のもじりですよね。

「正しい欲」、でも”正しい”って何でしょう。

この本にするマイノリティーの人たちは、自分たちの性欲を”正しくない欲”と認識していました。

何にも努力しないで自分の性欲が満たされるような世間にとって当たり前な性欲が”正しい欲”なのか。

でも性欲って自分じゃ選べないし、生まれ持ったものですよね。

きれいごとを言えば、どっちも”正しい”です。

でも、主人公たちマイノリティー側からすれば、自分たちは”正しくない欲”だと思ってしまいます。

それは、多数のマジョリティーから想像もできないことだから。

”多様性”という世間の流れに身を任せていながら、実際は排除するから。

食欲や睡眠欲に比べて、性欲って触れづらい雰囲気がありますよね。

だから、自分に想像できないような性欲に関しては、”多様性”という蓋をして見えないようにしているのかもしれません。

自分を含めて・・・

表紙の意味

表紙には、カモが潜っているようなイラストが描かれています。

最初見たときは、カモが空から撃ち落されているのかと思いました。

しかし、この本を読み終わった後は、水中の深くを潜っているカモの絵だと思いました。

多くのカモは水面に浮かんでいる餌を食べて満足していますが、このカモだけは水面の餌では欲を満たせず、暗くて冷たい水中へと潜っていく。

主人公たちマイノリティー側の人たちが、自分の欲を満たすためにネットの奥深くをさまよう姿とリンクできました。

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この記事を書いた人

はじめまして。
あらいぐまと申します。
読書とソロキャンプが趣味の28歳の会社員。
ミステリ小説多めです。
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