【感想】一線を越えたら日常に戻れなくなる・・・【嘘つきジェンガ 辻村深月】

嘘つきジェンガ 辻村深月 ネタバレ
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こんにちは、あらいぐまです。

今回は、辻村深月さんの「嘘つきジェンガ」を読みました。

辻村さんが描く3つの「詐欺」に関する物語。

あらいぐま

辻村深月さんの「詐欺」の物語。そんなの絶対に面白いじゃないか!!

辻村深月さんといえば、最近「かがみの孤城」を読み直して、号泣したばかり。

登場人物の心の動きがとても丁寧に描かれている小説で、大好きな本の一冊です。

この「嘘つきジェンガ」では、騙す側と騙される側の不安定な感情の揺れが丁寧に描写されており、まるで自分が詐欺に巻き込まれているかのごとくドキドキしながら、読んでいました。

辻村深月さんの小説は、心理描写を丁寧に描いているものが多いので、大好きです!

\辻村深月さんのオススメ小説!!/

目次

あらすじ

2020年のロマンス詐欺

2020年4月、大学に入学した耀太は、コロナウイルス感染拡大の影響を受け、入学式が延期になってしまう。地元を離れた耀太は、バイトの面接に断られる中、緊急事態宣言が発令された東京で寂しく過ごす日々を送る。そんな中、旧友からSNSを使ったバイトを持ちかけられる。それは、偽名と偽プロフィールを使い、騙しやすい人と連絡を取り信用を得ることだった。怪しみながらもお金欲しさにバイトに手を出してしまうが、それはロマンス詐欺の片棒を担ぐことだった。詐欺グループから脅しを受ける中、「美望子」と名乗る人妻と親密なメッセージを送り合うようになる。

5年目の受験詐欺

今から5年前、多佳子は次男の中学受験時に「特別紹介の事前受験」という名目で100万円を払い、合格を勝ち取っていた。「自分の息子は、本来この学校に通えるはずがない」という思いを持ちながら今まで過ごしていたが、5年後のある日電話がかかってくる。それは、「特別紹介の事前受験」は詐欺で、学校にお金なんか渡っていなかったというものだ。では、自分の息子はどうして合格したのか。母親の葛藤を丁寧に描いた物語。

あの人のサロン詐欺

紡は、人気漫画家である「谷嵜レオ」と偽ってオンラインサロンを運営している。自分の全てを使って「谷嵜レオ」を演じている紡にとって、家族や会員を騙しているという実感はなく、「谷嵜レオ」として多忙な日常を過ごしていた。本物の「谷嵜レオ」があんなことになる前までは・・・

一線を越えて後戻りできなくなる

嘘つきジェンガ 詐欺 

詐欺ってどこか他人事じゃないでしょうか。

ですが、誰にだって被害者になる可能性はありますし、加害者になってしまうことだってあります。

嘘だ嘘だ、と何度も言い聞かせる。嘘だ、こんなことに巻き込まれるなんて。

ATMで手続きをするとき、うるさいほど周りに貼られた「それ、詐欺じゃないですか?」の注意書き。

自分はきっと騙されることはないはずだ、と気にも留めず、景色の一部のように見えていたあれらの文言を思い出すと、倒れこみそうになった。

騙される事態についてまでは想定できても、まさか自分が騙す側になるなんて、絶対にありえないことだ。

辻村深月「嘘つきジェンガ」株式会社文藝春秋 p45

この主人公は、旧友に騙されて詐欺グループの仕事を手伝うことになります。

詐欺の被害者でもありながら、加害者でもあるのです。

最初は、アルバイト感覚で偽名を使い、「嘘」をつき始めます。

それがだんだんとエスカレートし、後戻りできなくなってしまいます。

主人公が後戻りできなくなり、絶望の淵へ追い込まれる様子が、読んでいてゾッとしました。

「詐欺」と聞くと、身近に感じられませんが、「嘘」は身近に感じることができます。

3つの物語の登場人物のように、最初は出来心でついた小さな「嘘」が、後戻りできないところまでエスカレートしてしまうかもしれません。

「詐欺」は小さな「嘘」の延長にあるのです。

そう思うと、「詐欺」は決して遠く離れた存在ではないことが分かって、恐ろしくなります・・・

ジェンガのように嘘を重ねる

辻村深月 小説 おすすめ ネタバレ

タイトルである「嘘つきジェンガ」の意味を考えてみました。

3つの物語にも共通するのですが、嘘って1つつけば、それを隠す嘘が必要になってきます。

そして、それを隠すために新しい嘘を重ねていく・・・

この嘘を重ねていく様子が、ジェンガのようだと思いました。

積み重なっていく嘘、そして嘘をつくたびに不安定になり、いつか崩れてしまう。

崩れる時には、大きな音を立てて、崩壊する。

周りを巻き込みながら。

ジェンガも同じように、積み重ねていくと不安定になっていきます。

そして、崩れる時は大きな音を立てて盛大に崩壊する。

「詐欺」がテーマの本作にぴったりなタイトルだと感じました。

ジェンガを崩さないためには、積み上げなければいい。

嘘も同じです。

崩壊を逃れるためには、嘘を重ねるのをやめればいい。

いろいろと考えさせられるタイトルです・・・

あらいぐま

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この記事を書いた人

はじめまして。
あらいぐまと申します。
読書とソロキャンプが趣味の28歳の会社員。
ミステリ小説多めです。
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